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Q1債権回収はどのような方法で行いますか?
A1債権回収には様々な方法があり,相談者と相手方との関係性や,相手方の資力・財政状況などにより対応が異なります。
債権回収を弁護士に依頼した場合,基本的に次の方法で対応します。
相手方が任意での支払いに応じない場合の債権回収の方法として,通常,まず考えられるのは,弁護士名での催告書の送付です。
弁護士名が明記された催告書を送付することにより,債務者に対し,貴社が法律の専門家である弁護士を付けたこと,及び支払いに応じない場合は法的措置を取る意思があることが伝わり,債務者が支払いに応じてくれるケースが多くあります。
支払督促手続とは,債権者の申立てに基づき,裁判所の書記官が債務者に対し,金銭の支払を命じてくれる制度です。
裁判所から「支払督促」の書類を相手方に送付してもらい,相手方の異議申立てがなければ,裁判所に仮執行宣言を発付し,相手方に強制執行を申立てることができます。
✓支払督促には,次のようなメリットがあります。
・書類審査のみで行われるため,裁判所に出向く必要がない ・裁判所に納める手数料が,訴訟の半額で済む |
✓一方で,次のようなデメリットがあります。
・相手方が支払督促に対し意義申立てをした場合,民事訴訟に移行する ・支払督促は相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てる必要があるため,民事 訴訟に移行した場合は相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に出頭しなければならない ・相手方の住所が分からない場合は手続きとることができない |
民事調停とは,裁判所を利用して,当事者同士が話し合いを行い,問題の解決を図る手続です。
民事調停は当事者間の合意によって成立するため,支払督促や民事訴訟に比べて柔軟な解決を図ることが可能です。
他方,当事者間で合意に至らない場合は調停不成立という形で調停が終了するため,合意の成立が全く期待できない場合には適さず,民事訴訟等の他の手続を採ることになります。
訴訟手続は,債権を回収する法的手段として一番の正攻法と言えます。
民事訴訟法の原則に従って,債務者が債権者に対して法的な支払い義務を負うかどうか,裁判所の判決によって解決を図る方法です。
訴訟手続は時間がかかるのでは?というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
しかし,訴訟手続の場合,事案によっては,第1回目の裁判期日が終了後,直ちに判決が出るケースや,相手方が和解を申し入れるケースなど,早期解決を望めることも少なくありません。
また,債務者の住所が分からない場合でも,公示送達という手続を経ることによって,判決を得ることが可能です。
なお,60万円以下の金銭の支払を請求する訴訟を提起する場合には,少額訴訟手続(民事訴訟法368条)を利用する方法も考えられます。少額訴訟手続は,原則として1回の裁判期日で終了し,直ちに判決が下ります。
ただし,少額訴訟手続の場合,相手方が応じず,通常訴訟への移行を求めた場合には,通常訴訟へ移行することになるため,最初から訴訟を提訴した場合と比較し,費用と時間を浪費してしまう可能性があります。
強制執行(差押え)とは,国家権力により,権利者が権利の内容を強制的に実現する手続きです。
訴訟で勝訴判決を得たり,相手方との間で裁判上の和解が成立したにもかかわらず,相手方が支払に応じない場合に,債権者が新たに裁判所に申立てをし,強制的に債権回収を図るというのが強制執行制度です。
強制執行手続は,債権回収における最後手段として,非常に有効な手続です。
強制執行は,差押えの対象となる財産に応じて,
①不動産執行
②動産執行
③債権執行
の3種類に分けられます。
不 動 産 執 行 | 相手方が所有している土地・建物等などの不動産を差し押さえ,強制的に競売することにより,債権回収を図る方法です。 |
動 産 執 行 | 相手方の店舗や自宅に立ち入り,そこで発見した相手方が所有する動産を強制的に売却し,債権の回収を図る方法です。 動産とは,動かすことのできる財産のことで,民法86条において,「不動産以外のものは,すべて動産とする」と定義づけされています。 |
債 権 執 行 | 債務者の第三債務者に対する金銭の支払を目的とする債権等を差し押さえて、当該債権から債権回収を図る執行手続です。 代表的なものとして,銀行の預金債権や,債務者が他の取引先に対して持っている債権などに対する差押えが挙げられます。 一般の企業において強制執行といえば,その多くはこの債権執行といえます。 |
仮差押えとは,相手方から確実に債権を回収するために,裁判所の決定により,債務者の財産処分に一定の制約を加える制度です。
上述のとおり,債権回収をするに当たっては,債務者に対して様々な働きかけを行うことになりますが,これらの働きかけには当然ある程度の時間を必要とします。
そのため,例えば相手方に財産があったとしても,催告や訴訟をしている間に隠匿されたり,第三者に売られてしまったり,勝手に使われてしまい,仮に訴訟で勝訴判決を得たとしても,相手方から債権を回収することができないという事態に陥るリスクがあります。
このような事態を防止するための手続きが,仮差押えです。
判決などの結論が出る前に財産を差し押さえるため,仮に差し押さえる,「仮差押え」と呼ばれています。
仮差押えは,判決などの最終的な結論が不明確な段階で,相手方に対し強力な命令を発するものであるため,当然仮差押えの申立ては容易には認められません。また,担保金として,一定金額を裁判所に納めるなどの要件があります。
以上のとおり,債務者から金銭債権を回収するためには様々な方法があり,具体的にどのような債権回収手段を選択して実行するかは,債権の金額や種類,債権者の状況や意向,債務者の財政状況など,事案によって異なります。
また,これらの手続きには専門的な知識が必要となりますので,まずは弁護士にご相談下さい。