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解雇にはどのような種類がありますか?

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Q5解雇にはどのような種類がありますか?

A5解雇には,解雇事由によって,大きく分けて懲戒解雇・整理解雇・普通解雇の3種類があります。

懲戒解雇重大な企業秩序違反に対する制裁罰である懲戒処分として行う解雇
整理解雇企業側の経営上の必要性に基づく人員整理を目的として行う解雇(いわゆるリストラの一環)
普通解雇  労働者の債務不履行を主たる理由とした解雇

解雇とは,労働者の合意なく,使用者が労働者に対して一方的に労働契約を解約することをいい,労働者の生活に大きなダメージを与えるため,法律によって厳しく制限されています。

労働者に解雇事由があると考えられる場合でも,解雇が認められるケースは非常に限定されているため,安易に認められないということを強く認識いただく必要があります。

懲戒解雇

懲戒解雇とは,重大な企業秩序違反に対する制裁罰である懲戒処分として行う解雇のことです。

懲戒処分を有効に行うためには,以下の要件を満たすことが必要です。

①周知された就業規則等に懲戒処分の根拠規定が存在すること
②従業員の非違反行為が就業規則等の懲戒事由に該当すること
③懲戒処分の内容に相当性があること
④手続に相当性があること

就業規則等における懲戒処分の根拠規定の存在

企業が労働者を懲戒するためには,就業規則に懲戒事由と懲戒処分の種類を定め,当該就業規則が労働者に周知されている必要があります。ここでいう懲戒事由とは,例えば「重大な経歴の詐称があった場合」,「会社の業務上の秘密を外部に漏洩し,会社に損害を及ぼした場合」等のことをいいます。また,懲戒処分の種類とは,例えば,戒告や減給処分,出勤停止,降格,解雇といったものです。
就業規則における懲戒規定が,懲戒処分の法律上の根拠となるため,就業規則に懲戒規定がない場合や,周知されていない場合には,懲戒処分ができないことになります。

懲戒事由の該当性

次に,懲戒処分の対象とされた従業員の行為が,就業規則等に定めた懲戒事由に該当し,懲戒処分を下すことに「客観的に合理的な理由」があると認められることが必要です。

懲戒処分の相当性

相当性とは,端的に言えば懲戒処分が「重すぎないこと」です。つまり,違反内容と処分内容が均衡していることが必要とされます。

懲戒処分は,「当該懲戒が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」とされています(労働契約法15条)。

また,「社会通念上の相当性」というのは,他の一般的な事案や処分と比較し,懲戒処分の内容・程度が厳し過ぎないか,充分な妥当性があるか,ということです。

懲戒処分は,懲戒事由とのバランスを慎重に判断しなければならず,一度の遅刻や些細なミス程度でただちに懲戒を科すのは懲戒権の濫用に当たると考えられています。

手続の相当性

懲戒処分を下す際には,定められた手続きを経ていることも懲戒処分の有効性の要件とされています。
すなわち,就業規則において,懲戒処分を下す場合の手順が明記されている場合にはこれを遵守する必要があり,また,このような規定がない場合でも,本人に弁明の機会を付与する等の最低限の手続は必要と考えられ,これが行われていない場合には,懲戒権の濫用と判断される可能性があります。

整理解雇

整理解雇とは,会社が経営不振の打開や経営合理化を進めるために,人員削減を目的として行う解雇のことを言います。

整理解雇は使用者側の事情による解雇のため,解雇の妥当性が厳しく問われます。

整理解雇の要件については,法律には明文の規定はありませんが,裁判例上,以下の4つの基準に着目し,整理解雇が権利濫用となるかどうか判断されています。

①人員削減の必要性
②解雇回避努力
③人員選定の合理性
④手続の妥当性

なお,近時の裁判例は,上記4つの基準を,ひとつでもかければ解雇無効と判断する「要件」とするのではなく,総合的判断における判断「要素」とし,上記基準を基に諸事情を総合的に考慮して,整理解雇が権利濫用とならないかどうかについて判断するものが多い傾向にあります。

①人員削除の必要性

人員削減を行うことが企業の経営上,十分な必要性に基づいていること,またはやむを得ない措置と認められることをいいます。

②解雇回避努力

企業が次のような解雇回避努力を行っていないような場合,判例上,解雇回避努力を尽くしていないと判断される傾向にあります。
・新規採用や中途採用の縮小・停止

・役員報酬の削減

・希望退職者の募集

③人員選定の合理性

整理解雇の対象者の選定にあたっては,合理的といえる選定基準を事前に定め,公正に適用する必要があります。

選定基準には,次のようなものがあります。選定基準が合理的といえるか否かについては,個別の事情に応じて判断されることになります。

・勤務態度

・労務の質的・量的貢献度

・人事考課
・正規労働者か否か

④手続の妥当性

使用者である企業は,人員整理を必要とする事情の説明や,必要とする整理解雇者の人数,対象者の選定基準,解雇回避努力の内容などについて説明を行い,再就職のあっせんや退職金の上積みなどといった退職条件について,誠意をもって協議する義務を負います。

普通解雇

普通解雇とは,労働者による雇用契約の債務不履行を主たる理由とした解雇のことをいいます。
債務不履行状態が将来に渡って継続することが予想される場合に,当該契約を解消するための最終手段として行使されるものであることを念頭に置く必要があります。

懲戒解雇と異なり,法律上は制裁としての性質を有していません。

解雇事由としては,たとえば,次のようなものがあります。

・労働契約の継続を期待することができないほどに重大な職務能力の不足があるとき

・病気・負傷により労働能力に重要な影響が及ぶとき

・労働者の協調性の欠如を原因として,業務の円滑に支障が生じ,労働契約の継続を期待し難いほど重要な支障が生じるとき

普通解雇であれば,企業に退職金制度がある場合,規程に基づいて退職金が支払われるのが一般的です。

これに対して,懲戒解雇の場合には,退職金規定などで懲戒解雇の場合には退職金を支給しない旨規定しているケースが多くあります。

解雇権濫用法理

客観的に合理的な理由のない解雇や社会通念上相当でない解雇は無効とする判例理論を,「解雇濫用法理」といいます。この判例法理は,労働契約法において次のとおり明文化されています。

「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合はその権利を濫用したものとして無効とする」(労働契約法第16条)

「客観的に合理的な理由」があるというのは,解雇理由とされる事実が存在し,解雇を正当化するだけの理由が裏付けられているということです。実際の判断においては,多くの要素が判断材料となります。

また,「社会通念上の相当性」というのは,他の一般的な事案や処分と比較し,懲戒処分の内容・程度が厳し過ぎないか,充分な妥当性があるか,ということです。

したがって,企業としては,解雇以外の方法(解雇以外の懲戒処分や配置転換,希望退職の募集など)による解決を検討するとともに,やむを得ず解雇を行う場合には,労働者との十分な話し合いの場を設けるなど,慎重な手続の下で行う必要があります。