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HOME > 残業代請求・未払賃金対策
「従業員から突然残業代を請求された」
「従業員から未払賃金があると請求された」
「労働基準監督署から是正勧告を受けた」
企業に対する従業員からの残業代請求は,企業を取り巻く労働問題の中で頻繁に起きている問題であり,しばしばニュースなどでも取り上げられ,耳にする言葉です。
在籍したまま未払賃金を請求されるケースや,退職した従業員から未払賃金を請求されるケースも増加しています。中小企業であったとしても,未払賃金の請求額は,内容によっては数百万から数千万円の訴訟に発展することもあり,企業の根幹を揺るがしかねません。
また,未払賃金の請求がなされる際に、頻繁に争点となるのが定額残業代(みなし残業代・固定残業代)に関する問題です。
未払賃金が発生した時に企業に生じるリスクには,次のようなものがあります。
✓訴訟になった場合,企業側が敗訴する可能性が高い
一般的に,労働者を相手に労働審判・訴訟を行う場合,裁判所は,企業と比べ弱者である労働者側の保護により重きを置いて進める傾向があるため,企業側が敗訴となる可能性が非常に高いといえます。
賃金が未払いの場合,未払賃金に加え,支払いが遅延しているあいだの利息に相当する,「遅延損害金」を請求される可能性があります。
2020年4月1日以降に未払いとなった残業代については,改正後の民法にもとづき,本来の支払日の翌日から年利3%の遅延損害金が生じます。(2020年3月31日以前に未払いとなった残業代については,改正前の民法にもとづき,使用者が会社や商人の場合には商事法定利率として6%,使用者が公益法人など営利を目的としない場合には民事法定利率として5%が適用されます。)
また,退職した労働者の退職金・退職手当を除く未払賃金については,退職日の翌日から,年利14.6%の遅延損害金が生じます。
訴訟となると,判決が出るまでに1年前後かかることは珍しくありません。遅延損害金の支払いを抑えるためには,なるべく有利な条件で,1日も早く労働者と和解することが重要です。
ある従業員の未払い賃金の請求をきっかけに,ほかの従業員にも波及し,結果として莫大な金額を従業員に対して支払わなければならなくなってしまうリスクがあります。
従業員から未払い残業代を求めて訴訟を提起され,当該事実が報道などによって世間に広まった場合,企業イメージの低下や信頼の失墜を招き,人材募集などにも悪影響を及ぼすおそれがあります。
従業員から残業代が請求された場合でも,次のような企業側の主張の展開により,減額できる可能性があります。
従業員から請求されている未払賃金が,過去何年分にも遡っていることがありますが,時効の成立を主張することで,時効にかかっている期間の未払賃金の金額を減らすことができる可能性があります。
労働基準法では,2020年3月31日までに支払日の到来した未払賃金については,給与支払日から2年,2020年4月1日以降に支払日が到来した未払賃金については,給与支払日から3年が経過した時点で消滅時効にかかると定めています。
企業が従業員に対し,明確に残業を禁止していた場合,残業代が発生していない旨を主張することができるケースがあります。
しかし,明確に残業を禁止していたわけではなく,単に残業を命じなかった場合や,客観的にみて,定時までに終えることのできない量の業務を命じていた場合,従業員が残業しているのを知りながら,残業を中止するように指示しなかったなどの場合には,黙示の残業命令があったものとされてしまうため,注意が必要です。
労働基準法で定められている「管理監督者」にあたる場合には,仮に労働時間が存在していたとしても,残業代は発生しません。
「管理監督者」とは,「監督若しくは管理の地位にある者」のことをいいます(労働基準法第41条2号)。具体的には,企業の中で相応の権限と地位とが与えられ,経営者と一体的な立場にある者をいい,名称にとらわれず,実態に即して判断されます。
定額残業代制には,基本給の中に,定額残業代を組み込んで支給する形態(組込型)と,基本給とは別に手当として定額残業代を支給する形態(手当型)があります。
定額残業代制を採用している企業の場合,一定時間の残業代が基本給や手当として既に支払われている,と主張できることがあります。
ただし,このような主張をするためには,雇用契約書や就業規則などの書面において,基本給と残業代に相当する賃金が明確に区別できるように表記されていることが前提となります。
また,従業員の実労働時間があらかじめ定められた残業時間を超えている場合,超えた部分の残業代は別途支払わなければなりません。
定額残業代制とは,労働者の実際の労働時間に関わらず,定められた労働時間の範囲内であれば,定額の賃金を残業代として支払う制度のことをいいます。
注意すべき点は,何時間働いたとしても賃金が変わらない制度ではないということです。
労働者が,あらかじめ想定された時間を超えて残業をした場合は,超過した部分の残業代を支払う義務が事業者に発生します。
定額残業代制には,基本給の中に,定額残業代を組み込んで支給する形態(組込型)と,基本給とは別に手当として定額残業代を支給する形態(手当型)があります。
企業目線で考える場合の定額残業代制のメリット・デメリットには,次のようなものがあります。
【メリット】
・企業が,残業代を労働者ごとに個別で計算,支給する手間が省ける ・残業時間が少なかったとしても定額の残業代が支給されるため,効率的に仕事をして残業時間を減らそうという労働者のモチベーションにつながる ・会社側としても残業時間の短縮に期待ができる |
【デメリット】
・職種によっては,定額残業代制の適用がなじまない ・適用対象となる従業員を増やしすぎると,収益に見合わない人件費の高騰に繋がるリスクがある ・正しく運用しない場合,違法となり,多大な損害を被るリスクがある |
過去の裁判例に照らすと,定額残業代制が有効となるためには,以下の要件を全て満たす必要があります。
①使用者と労働者との間で,定額残業代制を採用することの合意が存在すること(合意の存在) ②その合意において,通常の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分が明確に区別し得る内容となっていること(明確区分性) ③定額残業代が予定している分を超える残業が発生した場合は,その差額を労働者に支払うことについての合意が存在すること(清算合意) |
上記要件については,基本的には雇用契約書や就業規則等の規定を基に判断されることになるため,書面に残しておくことが重要です。
上記要件の中で特に問題になるケースとして多いのが,②の明確区分性の要件です。
最高裁は,定額残業代制が有効とされる要件として,通常の賃金に当たる部分と定額残業代に当たる部分が明確に区別し得ることを要求しています。
判例によれば,明確区分性の判断基準時は雇用契約締結時であり,雇用契約締結後に給与明細等によって定額残業代を明らかにすることでは足りないとしています。
したがって,要件を満たすためには,雇用契約締結時に,契約書や就業規則等で,通常の賃金に当たる部分と定額残業代に当たる部分を明確に区別して記載することが求められるものと考えられます。
定額残業代制が無効とみなされた場合,それまで使用者が労働者に対して残業代として支払ってきた賃金が残業代ではないことになり,残業代を一切支払っていないことになってしまいます。
定額で支払ってきた残業代に加え,別途残業代を支払う必要があり,企業にとっては大きな負担となります。
労働者から残業代を請求された場合であっても,労働者側の主張を整理し,企業側の主張を展開することによって,減額できる可能性があります。
また,定額残業代制は,正しく運用されれば一定のメリットがありますが,運用を誤った場合,無効となり,過去の残業代が一切支払われていなかったこととなってしまうため,注意が必要です。
残業代・未払賃金や定額残業代制に関してお悩みの企業の方は,一度弁護士にご相談ください。