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就業規則等の作成・確認

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就業規則等の作成・確認

目次

  1. はじめに
  2. 就業規則の作成・確認
    2-1. 就業規則とは
    2-2. 就業規則の必要性
    2-3. 就業規則に記載する内容
    2-4. 就業規則が有効となるための要件
  3. 雇用契約書の作成・確認
    3-1. 雇用契約とは
    3-2. 労働条件通知書との違い
    3-3. 労働条件通知書に記載すべき事項
  4. おわりに

1. はじめに

企業にとって,就業規則・雇用契約書などにおいて社内ルールや労働条件を明確にしておくことは,労使間のトラブルを未然に防ぐためにも非常に重要です。

ここでは,就業規則・雇用契約書の重要性について,解説いたします。

2. 就業規則の作成・確認

2-1. 就業規則とは

就業規則とは,労働基準法等に基づき,服務規律や労働条件など,職場内で労働者が守るべき約束(ルール)を明文化し,定めた規則のことをいいます。

2-2. 就業規則の必要性

労働基準法では,「常時10人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成しなければならず,作成した場合,または変更した場合には,行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならない」と規定されています。

「常時10人以上の労働者」の判断基準は,雇用契約(労働契約)を結んでいる労働者の数となります。その数には,パートタイマーや契約社員などの非正規の社員も含まれます。ただし,派遣労働者の場合は,派遣元の労働者としてカウントされるため,派遣先企業での人数にはカウントされません

なお,10人未満の場合,就業規則の作成・届出義務はありません。

義務はないものの,トラブル防止の観点や,職場におけるルールや秩序を維持するためにも,就業規則を作成することが望まれます。

就業規則を作成するメリットには次のようなものがあります。

  • ✓合理的かつ効率的な労務管理を行うことができる

企業は,労働者との間で雇用契約を結ぶことになりますが,その都度条件を協議していたのでは労働条件にばらつきが出てしまい,労務管理が煩雑化してしまいます。

就業規則において,職場規律や労働条件を画一的・統一的に定めることによって,効率的かつ合理的な労務管理を行うことが可能となります。

  • ✓労使のトラブルを未然に予防できる

就業規則は従業員の行動規範となるため,あらかじめ定めておくことにより,労務トラブルを未然に防ぐことにつながります。

  • ✓労使トラブルの解決がスムーズに進む

仮にトラブルに発展した場合でも,就業規則があれば,トラブルが起きた際の判断基準となるため,状況が深刻化する前に収拾がつくことがあります。

また,トラブルが訴訟に発展した場合,裁判所は就業規則に定められている内容を重視し,判断を下すことになります。

2-3. 就業規則に記載する内容

就業規則には,必ず就業規則に盛り込まなければならない事項(絶対的記載事項)と,その制度を置く場合にのみ規定すればよい事項(相対的記載事項)があります。

  • 絶対的記載事項】
① 始業・終業時刻,休憩時間,休日,休暇
② 賃金の決定・計算・支払の方法,賃金の締切り・支払の時期
③ 退職に関する事項(解雇事由等
  • 相対的記載事項】
① 退職手当に関する事項
② 臨時の賃金(賞与),最低賃金額に関する事項
③ 食費,作業用品などの負担に関する事項
④ 安全衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償,業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 表彰,制裁に関する事項
⑧ その他全労働者に適用される事項

2-4. 就業規則が有効となるための要件

使用者が就業規則で定めた事項は,労働契約の内容となります(労働契約法7条)。

したがって,就業規則で定められている事項は,労働者に対して法的拘束力を及ぼすことになります。

ただし,就業規則が有効となるためには,以下の要件が必要となります。

  • ・法令や労働協約に反しない内容であること
  • ・作成した就業規則を各事業書の見やすい場所への掲示,備え付け,書面の交付などによって労働者に周知したこと

3. 雇用契約書の作成・確認

3-1. 雇用契約とは

雇用契約とは,使用者と労働者との間で交わされる,雇用に関する契約のことをいいます。

雇用契約は,原則として使用者と労働者との間に合意の意思表示があれば成立するため,書面での交付がない場合でも,契約は成立することになります。

一方で,口約束では労働者が不利益な扱いを受けるリスクがあるという観点から,雇用契約が成立した場合,使用者には,主要な労働条件を労働者に明示することが義務付けられています。
この明示のために用いられる書面を,労働条件通知書といいます。

雇用契約は口頭でも成立しますが,後に労働トラブルに発展するリスクを防ぐためにも,雇用契約書を書面で作成し,取り交わすという形をとることをおすすめいたします。

3-2. 労働条件通知書との違い

雇用契約書の記載事項について,法律上の決まりはありません。

雇用契約書は,使用者・労働者の双方で署名捺印をして取り交わすという位置づけであるのに対し,労働条件通知書は,使用者側から一方的に労働者に対して通知する書面,という位置づけになります。

一方的な通知では,使用者と労働者の間で認識の齟齬が生じ,「言った・言わない」のトラブルに発展するおそれがあります。

このようなトラブルを避けるためには,労働条件通知書だけでなく,双方の間での雇用契約成立の証拠となる雇用契約書を作成して取り交わしておくことが有効と言えます。
なお,労働条件通知書と雇用契約書を一体とし,「雇用契約書兼労働条件通知書」とする方法もあります。

3-3. 労働条件通知書に記載すべき事項

労働条件通知書には,労働基準法の定めに従い,必ず記載する必要のある事項(絶対的明示事項)と,企業が定めをする場合は記載の必要がある事項(相対的明示事項)があります。

絶対的明示事項 相対的明示事項
・契約期間
・就業場所
・従事する業務
・始業時刻
・終業時刻残業の有無
・休憩・休日・休暇
・賃金の決定、計算・支払方法
・賃金の締日・支払日
・昇給
・退職   
        
・退職手当
・臨時の賃金・賞与
・労働者に負担させる食費や作業用品
・安全衛生
・職業訓練
・災害補償・業務外の疾病扶助
・表彰・制裁
・休職

4. おわりに

就業規則を作成するということは,会社の公式なルールを作ることを意味し,一度作成した就業規則は簡単に変更することができません。
したがって,就業規則の作成に当たっては,貴社の実態や法令に即した適正な就業規則を作成することが重要です。

また,中小企業においては,雇用契約書を作成していない会社もあるかもしれませんが,使用者・労働者間の認識違いによるトラブルによって予想外の不利益を被らないためにも,作成することをおすすめいたします。

就業規則・雇用契約書に関するお悩みやご不明点等ございましたら,まずはお気軽にご相談ください。