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労働審判の対応

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労働審判の対応

目次

  1. はじめに
  2. 労働審判対応
    2-1. 労働審判とは
    2-2. 労働審判の対象
    2-3. 労働審判を申立てられた場合の対応(企業側)
    2-4. 労働審判で解決することのメリット
  3. おわりに

1. はじめに

労働審判は,通常の裁判と比較し,迅速かつ柔軟に解決することを目指す制度であり,原則として3回以内の期日で審理が終結しますが,企業側は,その分迅速に事実調査を行い,反論の準備を進める必要があります。

ここでは,労働審判制度の概要と,労働審判を申立てられた場合の企業としての対応方法について解説します。

2. 労働審判対応

2-1. 労働審判とは

労働審判制度は,2006年から導入された制度です。

労働審判官1名と労働審判員2名によって構成される労働審判委員会が,事業主と労働者の間で生じた労働関係の事件を審理し,話し合いがまとまった場合は調停の成立による解決となりますが,その解決に至らない場合には労働審判を行うという手続きです。

労働審判は,労働者の立場を考慮し,労働関係紛争の早期解決を目的とした制度であるため,3回以内の期日で審理を終了することを原則としています。事件総数の約70%が,申立てから3か月以内に終了しています。

2-2. 労働審判の対象

労働審判の対象となるのは,個々の労働者と事業主との間に生じた,労働関係に関する民事的紛争(いわゆる個別労働関係民事紛争)です。

  • 具体的には,以下のようなものがあります。
  • ・賃金や退職金の請求に関する紛争
  • ・解雇や懲戒処分の効力に関する紛争
  • ・時間外手当の請求に関する紛争
  • ・安全配慮義務違反による損害の賠償を求める紛争

労働組合と事業主の間に生じた集団的労使紛争や,労働者間の紛争,公務員が懲戒処分の効力を争うような行政事件訴訟の対象となる紛争は,労働審判手続の対象とはなりません。

なお,個別労働関係民事紛争であっても,3回以内の期日で解決が見込めない紛争については,労働審判手続を利用することは不適当とされ,事件が終了されることがあります。

2-3. 労働審判を申立てられた場合の対応(企業側)

企業が労働審判を申立てられた場合,裁判所から,期日呼出状や申立書一式が郵送されます。

通常,第1回目の期日は,申立てから40日以内の日に設定され,その1~2週間前に答弁書(相手方の主張に対するこちらの反論を書面化したもの)の提出期限が設定されています。

原則として,第1回目の期日変更は認められない運用であるため,労働審判を申立てられた企業は,早期に答弁書の作成や証拠書類の準備に取り掛からなければなりません。

答弁書に記載すべき事項は,以下のとおりです。

・申立ての趣旨に対する答弁
・申立書に記載された事実に対する認否
・答弁を理由づける具体的な事実
・予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
・予想される争点ごとの証拠
・当事者間においてされた交渉
・その他申立てに至る経緯の概要

予想される争点について書証(事実を立証する証拠)があるときは,その写しを答弁書に添付する必要があります。

労働審判の場合,第1回期日までに,争点に関する十分な反論と証拠を全て出し切ることが,審判の結果を大きく左右します

2-4. 労働審判で解決することのメリット

労働審判の7割程度は,調停成立(和解)によって解決しています。

一方,調停が成立しなかった場合は,審判が行われ,これに相手方が異議を申立てた場合は,通常訴訟に移行することになります。

訴訟に移行した場合,内容によっては解決までに1年以上かかることがあります。

解決まで長引くことによって,未払賃金だけでなく,遅延損害金や付加金が加算されることで,解決金が予想以上に莫大なものになるリスクや,訴訟対応にかかる人的負担のリスクも増えることになります。

3. おわりに

短期間で充実した内容の答弁書を作成し,証拠書類を集め,期日において相手方からの質問に対する的確な回答や立証をすることは,企業の担当者や経営者のみでは通常困難であるため,法律の専門家である弁護士に相談・依頼することが望ましいでしょう。

訴訟に発展する前に解決するためにも,弁護士に依頼する場合は,申立書を受領してから出来る限り早期の段階で弁護士にご相談いただくことが重要です。