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虎ノ門ならではのリーガルサービスを静岡から
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HOME > 株主総会・取締役会対応
株主総会・取締役会は,企業の意思決定において,極めて重要かつ中心的な役割を担う機関であり,会社法上,手続方法や決議事項などが定められています。
しかし,多くの企業では,株主総会や取締役会を適法に実施しなければならないという意識が低く,会社法で定められた手続が踏まれていないケースがみられます。
株主総会や取締役会を開催せず,形だけ議事録を作成している会社もめずらしくありません。
株主総会や取締役会は重要機関であることから,手続きや運営に不備があった場合,会社にとって重大なリスクとなります。
株主との関係が悪化し,経営権などを巡って争いが生じた場合,株主総会が適法に行われていなかったことを理由に法的紛争に巻き込まれ,企業の根底を揺るがす事態に発展するケースも散見されます。
したがって,株主総会・取締役会の運営に当たっては,手続が適法に行われるように注意が必要です。
株主総会は,株主を構成員として,株式会社の基本的方針や重要事項について意思決定をする権限を有します。すべての株式会社は株主総会を置かなければならず,毎年事業年度の終了後,一定の期間に開催しなければならないと会社法で定められています。
取締役会設置会社において株主総会での決議事項とされている主なものとしては,次の事項などが挙げられます。
・会社の組織・事業の基礎的変更に関する事項 (定款変更,解散,合併,株式交換・移転,資本減少など) ・会社の計算に関する事項 (計算書類の承認) ・株主の重要な利益に関する事項 (剰余金の処分,株式の第三者有利発行など) ・役員の選任・解任に関する事項 (取締役,監査役,会計監査人の選任・解任など) ・役員の専横防止に関する事項 (役員報酬,退職慰労金贈呈額決定など) |
株主総会において,取締役,会計参与,監査役および執行役は,株主から特定の事項につき説明を求められた場合には,当該事項について必要な説明をなさなければならないとされています(会社法第314条)。この説明義務に違反し,株主の質問に対して十分な説明を行わずに決議した場合,当該決議の取消訴えの原因になり得ます。
ただし,以下の場合には,取締役は説明を拒むことができるとされています。
①質問事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合
②その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合(企業秘密に触れる場合など)
③その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合
株主総会の議長は,議題について相当の時間審議され,合理的判断ができうる状況に至ったと判断したときは,質疑を打切り,採決しなければなりません。
ただし,質疑打切りのタイミングが早すぎると,説明義務違反として決議の取消事由となりうるため,適正な議事進行がなされるように注意が必要です。
動議とは,株主総会において,株主から提出され,株主総会において審議・採決される議案のことをいいます。株主総会に適法に出席した株主は,株主総会において動議を提出し,提出された動議について審議・採決することができるとされています。
動議をその内容から区分すると,株主総会の議案に関する「実質的動議」(修正動議)と,株主総会の運営や議事進行に関する「手続的動議」に分けられます。
実質的動議(修正動議)については,その採否について株主の意思を問う必要があり,必ず審議する必要があるとされています。これに対し,手続的動議については,議長の裁量によって付議するかどうかを決めることができる動議と,必ず付議しなければならない動議があります。
株主総会における動議への対応を誤った場合,最終的に決議の効力を左右する大きな問題に発展する恐れがあるため,企業としては,その対応方法について入念な検討を行い,実際の場面では慎重に対応する必要があります。
取締役会は,取締役全員で構成される意思決定等を行う合議体であり,以下の権限を有しています。
・業務執行の決定
・取締役の職務執行の監督
・代表取締役の選定及び解職
取締役会設置会社では,代表取締役は3ヶ月に1回以上,自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないとされています。したがって,この規定からすれば,取締役会は,少なくとも最低3か月に1回の頻度で開催することが求められていると考えられます。
会社法上,取締役会の設置義務はありませんが,次の株式会社については,取締役会を設置しなければならないとされています。
・公開会社
・監査役会設置会社
・監査等委員会設置会社
・指名委員会等設置会社
公開会社とは,会社法上,「その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。」と定められています。つまり,全ての株式に譲渡制限がかかっている会社は非公開会社となり,それ以外の会社は公開会社ということになります。
親族会社をはじめとして,多くの中小企業はすべての株式に譲渡制限を付しており,非公開会社であるケースがほとんどです。非公開会社の場合には,取締役会の設置義務はありません。
取締役会において決定される事項は,以下の事項その他の重要な業務執行の決定とされています。
これらの事項の決定について,取締役会は取締役に委任することができないとされているため,必ず取締役会の決議を行う必要があります。
①重要な財産の処分及び譲受け ②多額の借財 ③支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 ④支店その他の重要な組織の設置,変更及び廃止 ⑤社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項 ⑥内部統制システムの構築に関する決定 ⑦定款の定めに基づく取締役会決議による役員及び会計検査人の会社に対する責任の免除 |
その他,会社法上,取締役会の決議事項が個別で定められており,よく行われる決議事項としては以下のようなものが挙げられます。
・ 株主総会の招集
・ 計算書類の承認
・ 譲渡制限株式の譲渡・承認取得
・ 株式分割
・ 代表取締役の選任・解任
・ 取締役による競業取引・利益相反取引の承認
利益相反取引とは,取締役が,自己又は第三者のために会社と取引をすることをいいます。
取締役がこの利益相反取引を行う場合には,取締役会において,当該取引につき重要な事実を開示して,その承認を受けなければなりません。
取締役が,会社の利益を犠牲にして,自身や第三者の利益を図ることをおそれがあるため,これを防止する趣旨で競業取引は制限されています。
競業取引とは,取締役が,会社の事業の部類に属する取引を,自己や第三者のためにすることをいいます。取締役が競業取引をしようとするときには,取締役会の承認を受けなければなりません。これを「競業避止義務」といいます。
会社としては,自由に同種事業を展開されると,会社の顧客やノウハウやなどを奪われかねず,会社の利益が害されるおそれがあるため,これを防止する趣旨で競業取引は制限されています。
なお,取締役会の承認を得て利益相反取引・競業取引を行った場合,取締役は,当該取引後遅滞なく,当該取引にかかる重要な事実を取締役会に報告する義務があります。
取締役が利益相反取引・競業取引を行った結果,会社に損害が生じた場合,当該取締役に任務懈怠があったものとして損害賠償責任を負うことがあります。取引の当事者以外の取締役であったとしても,実質的な関与の形態によっては賠償責任を負うことがあります。
株主総会・取締役会は,企業の意思決定を行う重要機関であるため,手続や内容に不備がないよう,会社法をはじめとした法令に関する十分な知識を踏まえて運営する必要があります。
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